ステーブルコイン発行体の収益要塞を140社連合が包囲するイメージ図、Open USDのフロート収益共有モデルを示す
著者 Giulia Ferrante プロフィール画像 Giulia Ferrante
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Open USD:140社連合がCircleに挑む、収益モデルの転換点

2026年6月30日、140社超の大連合がOpen USD(OUSD)を発表し、CircleのIPO株価は1日で最大17%急落した。新たなコインの話ではなく、フロート収益独占モデルへの正面攻撃だ。

2026年6月30日、VisaやMastercard、BlackRock、Stripeなど世界の大手企業140社以上が、新たなドル建てステーブルコイン「Open USD(OUSD)」の立ち上げを発表した。発表から数時間後、USDCの発行体であるCircleの株価は1取引日で最大17%下落した(CoinDeskの報道による)。

この市場反応が本質を語っている。注目すべきは「また新しいステーブルコインが出た」という事実ではなく、ステーブルコイン発行体を豊かにしてきたビジネスモデルへの正面攻撃だ。

何が起きたのか

コンソーシアムの名称はOpen Standard、通貨はOUSD。創設メンバーの顔ぶれは圧巻だ。決済ネットワークのVisa、Mastercard、American Expressに加え、資産運用大手BlackRock、BNY、Standard Chartered、BBVA、DBSといった大手銀行、クリプトネイティブのCoinbase、Aave、MetaMask、Solana、そしてテック企業のGoogle、Shopify、DoorDashが名を連ねる。リーダーを務めるのは、Stripeが10億ドル超で買収したステーブルコインインフラ企業Bridgeの共同創業者、Zach Abramsだ。

本格ローンチは2026年末を予定しており、まずSolanaネイティブとして展開し、その後他のネットワークにも対応する見通しだ。しかし市場のシグナルはすでに届いており、その読み方は明白だった。

核心は「フロート」の争奪にある

ここに本質がある。ステーブルコインは短期国債などで運用されるドル準備を裏付けとしており、その利息収入が発行体の収益源となる。Circleの場合、収益の約95%がこのフロート収益から来ている(同社のSEC提出書類より)。「発行体がフロートを独占する」モデルであり、TetherとCircle双方の繁栄を支えてきた仕組みだ。

Open USDはこれをひっくり返す。発行・償還手数料はゼロ、出来高制限もなく、何より準備金の運用益のほぼ全額がパートナー企業に還元される(少額の管理手数料を除く)。フロートを発行体に渡す代わりに、出来高を動かす側がそれを手にする。Visaのような決済ネットワークに近いモデルであり、CoinGeckoの2026年4月データによるとUSDTが市場の約62%、USDCが約25%を占める市場の弱点を正確に突く戦略だ。

Open USDが狙うステーブルコイン市場

ステーブルコイン市場シェア(総額約3,000億ドル)。出典:CoinGecko、2026年4月

3,000億ドル規模
  • USDT(Tether):約62%
  • USDC(Circle):約25%
  • その他(OUSDが狙う領域):約13%

注目すべき2社の参加

実は、参加リストの中で特に意味深長な2社がある。まずCoinbaseだ。2018年にCoinbaseはCircleと共同でCentreコンソーシアムを設立し、USDCを運営していた。しかし2023年にCentreは解散し、Circleはフルコントロールを取り戻すため2億ドル超を株式で支払った(Bloombergの報道による)。そのCoinbaseが今度は140社体制のコンソーシアムに戻ってきた。しかも収益共有が定款に明記された形で。Circleとの流通協定が8月に期限を迎えるこのタイミングは、それ自体が交渉上のメッセージだ。

もう1社はRippleだ。RippleはRLUSDを維持しながら、初日からOUSDの統合パートナーとして参加し、自社のレジャーを選択可能なレールの一つとして位置づけた。これはRippleの規制戦略と同じ合理的な論理だ。どのステーブルコインが勝っても取引フローを取り込む。一方、欧州ではCrédit AgricoleがEURXTで独自の道を構築している。

140社の力とリスク:表裏一体

慎重に見る向きも多く、アナリストの見方は割れている。ベンチャーキャピタルのDragonflyは、この参加リストはCircleのビジネスに対する現実の脅威だと評価しつつも、明確な警告を付け加えた。コンソーシアムは維持が難しく、簡単に崩壊する。140社のインセンティブを一致させ続けることは稀だ、と。Paxosが展開するGlobal Dollar Networkなど類似のコンソーシアムがすでに存在しながら市場均衡を動かせていない、という指摘もある。

誰もあまり口にしたがらない不都合な先例もある。FacebookのLibraプロジェクトは同様に豪華な顔ぶれのコンソーシアムで始まり、内部矛盾の重さに耐えかねて崩壊した。今回の違いは規制環境だ。GENIUS Actが明確なルールを定め、参加企業は単なるテック企業ではなく規制を受けた決済処理業者だ。日本の金融庁(FSA)が推進する2025年の改正資金決済法の枠組みとも、規制の方向性は符合している。

しかし本当の検証は一つしかない。ロゴの数ではない。140社のパートナーのうち、すでに利用しているステーブルコインではなくOUSDに実際の取引量を流すのは何社か。その答えはローンチ後にしか分からない。詳細はOpen Standardの公式サイトCircleのSEC提出書類で確認できる。

OUSDが日本の暗号資産市場に与える影響を測るには、bitFlyerやSBI VCトレードなどの国内取引所が統合パートナーとして動くかどうかが一つの指標になる。GENIUS Actの立法化が進む米国と並行して、日本でも規制の透明性が増す中、収益共有型ステーブルコインの設計は、既存発行体のビジネスモデルへの問いを世界規模で提起している。Circleの株価が次の四半期にどう推移するかと同時に、Coinbaseの8月の契約交渉の行方に注目したい。

著者 Giulia Ferrante プロフィール画像 Giulia Ferrante
更新日:
ステーブルコインズ ニュース
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