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米当局が決済会社から約84億円を没収、Tetherとの関係を精査

米連邦検察がCapstone社から約8,420万ドルを没収。EQIBankを通じたTetherとの関係をFTが報じたが、Tetherは訴追されていない。

読了時間:6分 編集方針

米連邦検察は、モンタナ州に本拠を置く決済会社Capstoneに関連する約8,420万ドルの民事没収を実現した。Capstoneは無許可のマネートランスミッターとして運営したとして告発されている。この件は2026年9月24日から25日にかけて公になったが、世界最大のステーブルコインを運営するTetherが関係しているとして注目を集めている。ただし、Tetherは一切の不正行為について訴追されていない。この84億円規模の没収事件を理解するには、情報源の連鎖を丁寧に追う必要がある。

まず最初に明確にしておくべき点がある。検察が提出した民事没収申立書には、Tetherの名前も、関連取引所Bitfinexの名前も、関係する銀行名も直接記載されていない。申立書が言及するのは「ある暗号資産企業」「関連取引所」「ドミニカに本拠を置く銀行」という表現にとどまる。これらをTether、Bitfinex、EQIBankと結びつけたのは、フィナンシャル・タイムズ(FT)が匿名の情報源を通じて報じたことによる。Tether自身はその後、FTの報道のうち同社とEQIBankとの商業関係に関する部分については正確であると認めた。ただし、捜査対象となっている違法行為の疑惑については否定している。裁判所に提出された書類が具体的に何を述べているかを確認しよう。

没収命令の内容

カリフォルニア州東部連邦地裁に2026年7月15日付で提出された民事訴状によると、Capstoneは少なくとも6州において無許可でマネートランスミッター業務を行い、銀行に対しては通常のITサービス会社として偽って接触していたとされる。2026年9月14日、合計約8,420万ドルの資産が実際に差し押さえられた。内訳はCapstone名義のウェルズ・ファーゴ証券口座から7,911万ドル、別のウェルズ・ファーゴ口座から186万ドル、JPモルガン・チェースから206万ドル、そして2つの暗号資産アドレスに分散していた約100万ドル相当のUSDTである。

Tether Says EQIBank Exposure Is Below 0.034% of Assets After U.S. Seizure | TokenPost
A federal forfeiture filing itemizes about $84.2 million in cash and USDT, below EQIBank's separately cited $89 million figure.

申立書によれば、Capstoneの背後にはドミニカにライセンスを持つデジタル銀行EQIBankが存在し、同行がCapstoneの資金移動の方法を指示していたとされる。Capstoneのオーナーはカリフォルニア州の住居でFBIの家宅捜索を受けており、同社の弁護士は「いかなる違法行為も否定する」とし、迅速な解決を望むと述べた。EQIBankも差し押さえられた資金の回収を求める緊急申立てを提出し。Capstoneに欺かれており、同社が正規に登録されていると信じていたと主張したが、裁判官はこの申立てをすでに棄却している。

決済会社とUSDTをつなぐ銀行口座の連鎖
決済会社とUSDTをつなぐ銀行口座の連鎖

Tetherとの関係を正確に整理する

TetherはEQIBankが自社の銀行送金(USDTの発行・償還に関連するもの)を処理していたことを公式に認めた。ただし、捜査対象となった行為については把握していなかったと述べている。また、グループ全体の資産に占める潜在的なエクスポージャーを0.034%未満と定量化しており、直近の四半期証明書のデータに当てはめると、約6,380万ドルに相当する。Financial Timesの報道によれば、TetherとEQIBankの関係は単なる顧客にとどまらず、Thetherが同行に出資し、シンガポールの金融機関にTether名義の口座を開設することと引き換えに支援拡大を申し出ていたとされる。ただし、この詳細は英国メディアが引用した文書から得られたものであり、Tether自身がこの特定の点を直接確認したわけではない。

オンラインで既に広まっている誤解を防ぐために明確にしておく必要がある。TetherもBitfinexも、本件手続きにおいていかなる不正行為でも訴追されていない。検察は両社を被告として起訴しておらず、両社は正規の決済処理のためにCapstoneおよびEQIBankを通過した資金に関連して書類に記載されているに過ぎない。

確認済みと未確認の区別

重要な区分。出典: 司法文書、Financial Times、Tether、2026年

  • 確認済み: Capstoneから8,420万ドルが押収。TetherはEQIBankの銀行送金における顧客。
  • FTが特定(起訴状には非記載): 関与企業がTether、BitfinexおよびEQIBankであること。
  • 訴追なし: TetherもBitfinexもいかなる不正行為でも起訴されていない。

関連する詐欺スキームの構造

本件とは別個だが関連する要素として、司法文書が示す詐欺スキームがある。被害者はFBI捜査官を名乗る人物から接触を受け、心理的圧力によって送金を強いられた。そのカネはステーブルコインへと変換された。Capstoneはまさにこの暗号資産への変換を促進する役割を担っていたとされる。重要なのは、これもあくまで詐欺師が利用した決済インフラの問題であり、最終的な変換手段として使われたステーブルコインの発行者に対する訴追ではないという点だ。

押収の詳細な内訳
押収の詳細な内訳

より広い視点から読む

実は、本件は、ステーブルコイン、国際コルレス銀行制度、そしてマネーロンダリング防止規制の間に存在する繊細な接点を浮き彫りにする。大手ステーブルコインがグローバル規模で機能するためには、法定通貨建てでのトークン発行・償還を処理するために、複数の法域に分散した銀行や決済プロセッサのネットワークに依拠せざるを得ない。そのチェーンのある一環が規制上の責務を怠った場合(本件では、決済プロセッサが米国の銀行にIT企業と虚偽申告していた)、Thetherのようにサービス利用者に過ぎない事業者にも、過失の有無にかかわらず、評判上・業務上のリスクが波及しうる。このテーマは、Bitraceによる不審アドレスへの資金フロー報告書を分析した際に取り上げた、ステーブルコインに関連するハイリスクな資金フローへの関心の高まりとも連動している。

観察者にとって、この事案が示す教訓は二つある。一つは、The Clearing HouseとQuantの事例で見たように、ステーブルコインが従来型金融インフラに深く組み込まれていく中で、それを支える銀行チェーンの各リンクが規制義務を完全に遵守することの重要性だ。一カ所の脆弱性が、実際に関与した金額と不釣り合いな評判上の影響をもたらしかねない。もう一つは、複雑な法的手続きが誤解を招く見出しで簡略化されるリスクがある本件のようなケースが、犯罪で正式に起訴された者と、捜査対象の取引先や顧客として関与した者を明確に区別することの重要性を改めて示しているという点だ。今後数週間で関係者全員から新たな説明が出てくる可能性があり、引き続き手続きの進展を追っていく。これらのツールへの理解を深めるには、ステーブルコインとは何かを解説したガイドも参照してほしい。

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