2026年4月14日、ゴールドマン・サックスはSECに対してGoldman Sachs Bitcoin Premium Income ETFの予備目論見書を提出した。運用残高3.6兆ドルを誇る同行が、単純なBTC価格追跡ではなく毎月のカバードコール戦略で利回りを生成するファンドに乗り出した事実は、日本の暗号資産投資家にとっても見逃せない動きだ。
カバードコール戦略の仕組み:BTCで「定期収入」を得る
このファンドはBTCを直接保有しない。BlackRockのIBITやFidelityのFBTCなど、既存のスポットETFの口数を購入し、その上にコールオプションを売る構造だ。オプション売却で得たプレミアムを毎月投資家へ分配する。大幅な上昇局面ではアップサイドの一部を犠牲にする代わりに、定期収入を提供するという設計である。
この手法はJPMorganのJEPI(S&P500対象、残高350億ドル超)と同じロジックをBTCに初めて本格適用したものだ。ポートフォリオはGSAMのRaj GarigipatiとOliver Bunnが積極運用し、市況に応じてBTCエクスポージャーの40〜100%をオプションでヘッジする。
日本の文脈で言えば、bitFlyer・Coincheck・SBI VCトレードといった国内取引所でのBTC現物取引に係る利益は雑所得(最高税率55%)として課税される。カバードコール型ETFが国内で提供された場合、配当所得としての分離課税が適用される可能性があり、課税上の扱いが根本的に異なる点は注目に値する。現時点では米国上場ETFであり、国内投資家が直接購入するにはNISA枠外の特定口座経由となる。
ブルームバーグETFアナリスト、Balchunasが「衝撃」と表現
ブルームバーグのETFアナリストで市場で最も注目される論者の一人、Eric Balchunasは自身のXアカウントで即座に反応した。
SHOCK: Goldman jumping into the bitcoin ETF game.. with a filing for a Bitcoin Premium Income ETF pic.twitter.com/WszEIrQ2tV
— Eric Balchunas (@EricBalchunas) April 14, 2026
Balchunasはさらに、ゴールドマンがBlackRockより先に上場を果たす可能性を示唆した。同ファンドは1940年投資会社法に基づきケイマン諸島子会社経由で登録される構造で、BlackRockが1月に提出した類似申請とは規制上の経路が異なる。"Goldman may sense an opportunity to leapfrog them"(ゴールドマンはBlackRockを飛び越えるチャンスを感じているかもしれない)と彼は書き、このタイプの商品を"boomer candy"(純粋な投機より定期収入を好む層向けのビットコイン)と表現した。この言葉はすでにX上でバイラルになっている。
モルガン・スタンレーMSBT上場から1週間後の申請
タイミングは偶然ではない。わずか7日前、モルガン・スタンレーはMSBT——米大手銀行が直接発行した初のBTCスポットETF——を上場し、第1週だけで1億ドル超を集めた。同行デジタル資産責任者Amy Oldenburgがブルームバーグのインタビューで認めた通り、これは同行史上最も成功したETF立ち上げだ。
ゴールドマンはまったく異なるプロファイルの投資家を狙っている。-20%の下落に耐えられない層、BTCのボラティリティを抱えながらも定期収入を求める層だ。日本の個人投資家にも似たニーズは存在する。毎月分配型ファンドへの根強い需要がその証左だ。
ウォール街のビットコイン:投機から金融インフラへ
2026年4月14日単日だけで、米国ビットコインスポットETF市場全体に4億1200万ドルが流入した。同週にはMSBTが1億ドルを突破し、Legal & Generalが500億ポンド規模のマネーマーケットファンドをブロックチェーンに移行、CoinSharesがナスダックに上場した。
これは一時的な波ではない。機関資本のBTCへの構造的な移行だ。FSA(金融庁)が国内暗号資産交換業者への規制強化を進める一方、海外ではETFという規制整備済みの器を通じてBTCが主流金融市場に組み込まれていく。この非対称性は、日本のJVCEA加盟業者にとっても長期的な競争圧力となりうる。
ゴールドマンCEOのDavid Solomonはかつて「I'm an observer of bitcoin」と語っていた。3.6兆ドルの運用資産を持つ同行がSECに申請書を提出した今、その「観察」フェーズは終わった。
ファンドの上場は2026年6月末を予定している(SEC審査の延長がなければ)。手数料はまだ公表されていないが、ゴールドマンがコスト競争で負けた前例はほとんどない。
