グローバルのステーブルコイン市場は約3,050億ドル規模に達しているが、そのうちユーロ建てステーブルコインはわずか6億5,000万ドル——全体の0.25%未満にすぎない。この不均衡を是正すべく、欧州12の大手銀行がコンソーシアム「Qivalis」を結成し、2026年下半期に初の機関投資家向けMiCA準拠ユーロ・ステーブルコインの発行を目指している。日本の金融庁(FSA)が進める暗号資産規制の文脈においても、欧州の動向は重要な比較軸となる。
Qivalis:欧州12行が結集した初の機関級ユーロ・ステーブルコイン
2026年4月21日、アムステルダムを本拠地とするコンソーシアム「Qivalis」は、機関投資家向けMiCA準拠ユーロ・ステーブルコインのインフラ構築に向け、Fireblocksを技術パートナーとして選定したと正式発表した。
コンソーシアムのメンバーは、Banca Sella、BBVA、BNP Paribas、CaixaBank、Danske Bank、DekaBank、DZ BANK、ING、KBC、Raiffeisen Bank International、SEB、そしてUniCreditの12行。イタリアはUniCreditとBanca Sellaの2行が参加しており、単一国として最多の参加数を誇る。
発行は2026年下半期を予定しており、オランダ中央銀行(DNB)によるMiCAR認可が前提条件となる。2026年7月1日にMiCAの移行期間が完全終了するタイミングに合わせた戦略的な日程だ。
なぜFireblocksか:10兆ドルのデジタル資産インフラ
Fireblocksはデジタル資産取引の累計処理額が10兆ドルを超え、Worldpay、BNY、Revolut、Galaxyといったグローバル金融機関と連携している。同社が開発したERC-20F標準は、KYC・AML・制裁スクリーニングを機関水準で組み込んだステーブルコイン専用規格だ。
Qivalisにとって、Fireblocksの採用は初日からトークナイゼーション対応インフラ、エンド・ツー・エンドの資金管理、監査対応レポート体制を確保することを意味する。実証実験ではなく、B2B決済・24時間365日のクロスボーダー送金・トークン化資産の決済に即投入可能な商用製品だ。
"Fireblocks' platform gives us the security, compliance controls, and operational infrastructure to deliver exactly that."
New FXC Intelligence research: Fireblocks named the only Market Leader in Foundational Infrastructure for stablecoin payments.
— Fireblocks (@FireblocksHQ) February 25, 2026
The assessment analyzed providers across market traction and strength of capabilities. Our position reflects platform adoption by institutions… pic.twitter.com/6j8VfSDIlq
ドル覇権に挑む:欧州が直視すべき数字
2025年のグローバルのステーブルコイン取引量は前年比75%増の33兆ドルに達した。そのうち99%がドル建てであり、ユーロ建てステーブルコインは全体の0.25%未満だ。ユーロは世界第2位の取引通貨でありながら、デジタル決済の世界では存在感を示せていない。
フランス財務大臣Roland Lescureは2026年4月17日のパリでの講演で、「欧州には規制だけでなく、より多くのユーロ・ステーブルコインが必要だ」と明言した。規制への懐疑から一転して積極姿勢を打ち出した欧州主要国の変化は、日本のFSAや日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が進める制度整備にとっても参照すべき事例となる。
日本市場への示唆:MiCAと国内規制の比較軸
日本はFSA監督下で世界最高水準の暗号資産規制体制を整備してきた。暗号資産の利益は雑所得として最大55%の税率が適用され、JVCEAの自主規制も機能している。一方、法定通貨担保型ステーブルコインについては、2023年の資金決済法改正により「電子決済手段」として規制枠組みが整備された。
Qivalisが2026年下半期に発行するユーロ・ステーブルコインは、MiCA下で規制された初の機関級ユーロ建てデジタル通貨となる。1:1ユーロ担保・伝統的銀行システムとの統合という特徴は、日本の電子決済手段等取引業者に求められる要件と構造的に共鳴する。
- MiCA準拠:欧州規制当局の認可に基づく透明な運営体制
- 1:1ユーロ担保:アルゴリズム型ステーブルコインのリスクなし
- 機関インフラ:Fireblocks ERC-20F標準、KYC・AML内蔵
- 24時間クロスボーダー決済:B2B・国際決済への即時活用が可能
2026年下半期に何を注視すべきか
最大の変数はDNBによるMiCAR認可の可否だ。承認が予定通り進めば、Qivalisのユーロ・ステーブルコインはドル覇権に対する最初の実質的な機関製品として市場に登場する。
世界最大のステーブルコインTetherを創設したGiancarlo DevasiniとPaolo Ardoinoはイタリア人だ。そして今、同じイタリアのUniCreditとBanca Sellaが、欧州の代替手段を構築する側に立っている。ドル支配の終焉ではないが、欧州デジタル通貨主権に向けた最初の具体的な一歩として、bitFlyer・Coincheck・SBI VCトレードを利用する日本の投資家も注目しておくべき動向だ。
Qivalisのユーロ・ステーブルコインはいつ発行されますか?
2026年下半期を予定しており、オランダ中央銀行(DNB)のMiCAR認可が前提条件です。
Qivalisコンソーシアムにはどの銀行が参加していますか?
UniCredit、Banca Sella、BBVA、BNP Paribas、CaixaBank、Danske Bank、DekaBank、DZ BANK、ING、KBC、Raiffeisen Bank International、SEBの欧州12行が参加しています。
Fireblocksが技術パートナーに選ばれた理由は何ですか?
Fireblocksはデジタル資産取引の累計処理額が10兆ドルを超え、KYC・AML・制裁スクリーニングを機関水準で組み込んだERC-20F標準を開発した業界のリーダーです。
ユーロ・ステーブルコイン市場の現状は?
2026年時点でグローバルのステーブルコイン市場約3,050億ドルのうち、ユーロ建ては約6億5,000万ドルで全体の0.25%未満にとどまっています。
