7月に入り市場全体が下落するなか、XLMは24時間で約13%上昇し、出来高は平均のほぼ2倍に達した。CoinGeckoのデータによると、この動きの背景にあるのは米国金融界で最も権威ある機関名、DTCCである。
ただし、業界メディアの多くはこの話を誇張して伝えた。実際に何が発表され、何が発表されなかったのかを整理する価値がある。
この1週間で起きたこと
今回の上昇は単一の発表ではなく、1週間に集中した3つの機関投資家向け触媒によるものだ。6月末にDTCCは、自社のトークン化サービスをStellarネットワークに接続する計画を改めて確認した。6月30日にはCircleがクロスチェーンプロトコルを通じてStellar上でのUSDCネイティブ転送を有効化した。6月24日にはMatrixdockがLBMA認定の金地金を裏付けとするトークン化ゴールドXAUmをStellarネットワーク上に展開した。
3つの異なる機関シグナルが、同じ方向を向いている。市場の残りが資金流出を論じるなか、Stellarは規制対応資産のインフラとして着々と存在感を高めている。
DTCCとの提携:誇張なしで読み解く
DTCCは一般的な存在ではない。米国のほぼすべての株式取引を支える清算機関であり、同機関のプレスリリースによると預かり資産は114兆ドル超、年間決済取引額は4.7京ドルに上る。5月には自社のトークン化サービスをStellarに接続すると発表し、マルチチェーン戦略における最初のパブリックブロックチェーンに選定した。資産の本番稼働は2027年前半を予定しており、本番テストは今年7月から開始される。
DTCC and the Stellar Development Foundation announced today plans to enable the tokenization of DTC‑custodied assets on the @StellarOrg network. This collaboration advances DTCC's multi chain strategy and expands how traditional assets move across digital ecosystems.… pic.twitter.com/bdeX0JmDGY
,DTCC (@The_DTCC) May 27, 2026
ただし、流布している誇張された数字には注意が必要だ。DTCCがStellar上で114兆ドルをトークン化するわけではない。その数字はDTCCが預かる資産総額だ。当初の対象範囲はRussell 1000構成銘柄、主要インデックスETF、そして米国債に限定される。法的な元帳、いわゆる「ゴールデンレコード」はDTCCが引き続き保持する。オンチェーントークンはその同期された表現形式であり、SECが2025年12月に付与したノーアクションレターによって実現可能となっている。
なぜStellarが選ばれたのか
実は、この選択が評価したのは速度や低手数料ではなく、コンプライアンス対応力だ。Stellarはプロトコルレベルで、規制対応機関が求める機能を統合している。具体的には転送制限、本人確認コントロール、資産の凍結や取り消しの仕組みだ。この取り組みは、DTCCが2023年に買収したトークン化プラットフォームSecurrencyとの約10年にわたる協力関係に端を発する。
State of Stellar Q1 2026 & Beyond @KreiserMatt sits down with @StellarOrg President @JoseFDaPonte to unpack Q1 2026, @The_DTCC + SDF plans for tokenization of DTC-custodied assets on Stellar, and much more 👇
,Messari (@MessariCrypto) June 4, 2026
0:00 Intro
0:49 DTCC Announcement
4:30 Why DTC Chose Stellar… https://t.co/bCbYgWgZ8O pic.twitter.com/jy09ly3Q5b
ネットワークのファンダメンタルズも堅調だ。Stellar上でトークン化された実物資産はStellar Development Foundationのデータによると28億ドルを超え、ステーブルコイン決済は第1四半期に前年同期比71%増となる55億ドルの過去最高を記録した。これはNasdaqがPythにデータを持ち込んだ動きと同じ底流であり、トークン化は自らの軌道を選び始めている。
XLM:底からの反発
主要局面におけるXLMのドル建て価格(概算値)。出所: 市場データ、2026年7月
トークン需要は自動的には生まれない
ここでは、RippleのMiCAライセンス問題に適用したのと同じ冷静な分析が必要だ。インフラの進展とトークンへの需要は、別々の軌道を走っている。トークン化された証券はそれ自体が独立した資産であり、XLMはネットワーク手数料のためのネイティブトークンとして機能する。つまりこの提携は、大量のXLMが機械的に必要になることを意味しない。
今回の上昇は、Stellarの長期的な重要性に対する賭けを織り込んでいる。すでに資金が流入しているわけではない。7月からの本番テスト開始、2027年の資産稼働という日程を考えると、発表から実際の取引量が生まれるまでには12か月の実行フェーズがある。その過程で、ファンダメンタルズと価格のギャップが縮小するのか、それとも従来通りの物語で終わるのかが明らかになる。詳細はDTCCの公式サイトとStellarの公式サイトで確認できる。
日本の投資家にとって注目すべき点は、FSA(金融庁)がRWA(実物資産トークン化)規制の枠組みを整備しつつある時期と、このDTCC・Stellarの動きが重なっていることだ。SBI VCトレードやbitFlyerを通じてXLMを保有する投資家は、2027年前半の資産稼働というマイルストーンを一つの判断軸に置きながら、ネットワークファンダメンタルズの変化を追い続けることが、現時点での最も具体的な監視ポイントとなる。
