ビットコインは過去最高値から50%下落している。その数字は衝撃的だが、価格の水面下ではより静かで重要な変化が起きている。長期保有者の世代が、次世代の買い手へとコインを引き渡しているのだ。
これが「大規模ローテーション」と呼ばれる現象であり、今が底値なのか、それともより長い下落の途中地点なのかを決定づけるシグナルとなる。データを落ち着いて見ていく価値がある。なぜなら、二つの解釈の差は数万ドル規模に及ぶからだ。
市場を揺るがす数字
言い換えると、まず事実から確認する。CoinDeskのデータによると、ビットコインは2025年10月に124,000ドルを超える過去最高値を記録した後、2026年初頭には93,000ドル台でスタートした。その後、7月1日には21カ月ぶりの安値となる58,000ドルまで滑落し、現在は63,000ドル前後で反発している。しかし、最高値からの半値下落という事実に変わりはない。過去5カ月間、60,000ドルから80,000ドルのレンジで停滞し続けており、市場全体に疲弊感が漂っている。
ビットコイン、ピークからの下落
ビットコイン価格(ドル建て)。出所: CoinDesk、2026年
大規模ローテーション:オンチェーンデータが示すもの
ここで話が興味深くなる。Glassnodeが提供する注目指標「RHODLレシオ」は、長期保有者の保有資産と新規参入者のそれを比較するもので、7月初旬に6.5を記録した。Glassnodeによると、これは史上2番目に高い水準だ。この数値が意味することは明確で、2023年から2024年にかけて積み上げられたコインが、パニックを起こすことなく、現在の価格を割安と判断する新世代の買い手へと移っているということだ。
これは歴史的に見ても岐路となるシグナルだ。2022年には似たような動きがFTX崩壊と重なり、ビットコインは15,000ドルまで急落した。一方で、2015年、2019年、2023年の底値近辺で続いた長期的な横ばい局面は、その後の大幅な上昇に先行していた。いずれのケースでも、価格が再上昇する前にRHODLレシオが圧縮されていた。決定的なのは、今日買い手となっている投資家の資本力だ。今回のドローダウンで初めて、含み損を抱えるビットコインが含み益のものを上回った。
初めて、含み損BTCが含み益BTCを超えた
状態別ビットコイン供給量、2026年7月。出所: Glassnode
- 含み損: 1,083万 BTC
- 含み益: 922万 BTC
しかし表面下では、長期保有者が再び積み増しを始めている。Glassnodeのデータでは、長期保有者の供給量は過去最高の1,630万ビットコインに達し、取引所の残高は7年ぶりの低水準にある。確固たる信念を持つ投資家がコインを吸収しており、手放してはいない。日本のビットコイン保有者にとっては、国税庁が暗号資産取引に対して総合課税(最大55%)を適用している点を念頭に、こうしたサイクルを長期視点で捉えることが特に重要だ。
ETFシグナル:残った投資家と逃げた投資家
機関投資家側も同様に複雑なシグナルを発している。6月のビットコイン現物ETFは過去最悪の月となり。約45億ドルの資金流出が発生した。ある大手銀行は12カ月の資金流入予測をゼロに修正したほどだ。しかし、全体像を見ると状況は一見より堅固だ。
Bloomberg IntelligenceのアナリストであるEric Balchunas氏が4月のポスト(X上)で指摘したように、2025年10月の下落以降に流出した資金は約65億ドルに過ぎない。ETF設定来の累積流入額550億ドルと比較すると、投入資本の88%がいまだ残留している。同氏は「ETF投資家はパニックになっておらず、下落局面で買い増している」と述べた。
ETF投資家は逃げていない
2025年10月下落以降の資金流出額と設定来累積流入額の比較。出所: Bloomberg Intelligence、2026年
資金フローには反転の兆しも見られた。7月2日には、ETFが10日連続で続いていた27億ドルの流出トレンドを断ち切り、2億2,100万ドルの資金流入を記録した。ただし回復はまだ不安定で、プラスとマイナスの日が交互に繰り返されている。新たな確信とはまだ言えない。市場は触媒を探している段階だ。
マクロの分岐点:Fed、インフレ、イラン情勢
オンチェーン外では、三つの変数が相場を左右している。第一はインフレ。6月の消費者物価指数が予想を下回る低水準で着地したことで、ビットコイン価格は約4%の反発を見せた。第二は米連邦準備制度理事会(FRB)だ。Kevin Warshの下で引き締め寄りのスタンスを維持するFRBでは、18人の委員のうち9人が年内の利上げを予測しており、7月28日から29日の会合が最重要イベントとなる。第三は地政学リスクで、米国とイランの緊張激化がリスク資産と原油相場の重荷となっている。日本の投資家にとっては、FRBの金融政策が円ドルレートを通じてビットコインの円建て価格にも間接的に影響することを忘れてはならない。
二つのシナリオ、一つの決定的な月
ここから二つの対立する見方が浮かぶ。古典的サイクル論は、50,000ドル台以上の水準は4年ごとの半減期リズムによるより長い下落の一段階に過ぎないと主張する。一方、機関投資家シナリオは、ETFや企業の参入がサイクルを延長・緩和させ、深いドローダウンを大きな強気相場の中の単なる調整に変えたと見る。
後者の根拠となるパターンがある。市場の成熟とともに下落幅が縮小しており、初期サイクルの94%から現在は60〜70%程度への収束が見られる。また、Strategy社のように717,000ビットコイン超を保有する企業による構造的な需要フロアも存在する。しかし、その同じフロアにはリスクも潜んでいる。流動性が薄い局面で大規模な売却を迫られれば、価格は50,000ドルへの加速的な下落を引き起こしかねない。
大局的な読み
むしろ結局のところ、ローテーションこそが最大の手がかりだ。長期保有者が最高値から50%割引で新世代に売り渡しているということは、新参者が粘り強く保持し続けるという賭けをしていることを意味する。これが底値なのか落とし穴なのかは、一つの問いに尽きる。新たに流入する資金は確信なのか、それとも一時的な投機なのか。
答えはインフレ指標、月末のFRB会合、そしてETFのフローという形で間もなく明らかになる。注視すべきシグナルは明確だ。オンチェーンの蓄積とETFのフローが同じ方向を指す月が来たとき、真にトレンドが転換する。それまでのルールは一つ、恐怖ではなくフローを見ること。マクロの参考情報は連邦準備制度理事会の公式文書とSECへの届出書類で随時確認できる。bitFlyer、Coincheck、SBI VCトレードなど国内取引所を利用する投資家は、金融庁(FSA)の最新ガイダンスと合わせてこれらのマクロ指標を確認することを勧める。
